2020年私的読んだものまとめ
表題の通り、聴いたものに引き続き読んだもののまとめ。
1.大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』
今年の年明けに読んだ。シオランについてはTwitterのbotアカウントがあり、存在は知っていたので気になって読んだもの。著者自身、シオランの研究者であり、シオランの生涯や思想について丁寧に解説がされており、とても良い本だった。著者自身もあとがきで言及しているとおり、タイトルはどうかと思うけど。
個人的には、シオランが言うペシミズムは前提条件みたいなものなんだよな、ということがあらためてわかって良かった。表紙はつくみず氏が手がけており、これを読んだのをきっかけに『少女終末旅行』も読んだ。また、この辺りで今更ながら坂口安吾の『堕落論』とか太宰治の『人間失格』を読んだりしていたのでこの時期はある種のグルーブ感みたいなものがあった気がする。絶望と仲よくなろう。
2.保坂和志『読書実録』
読んだときの感想はnoteに書いた。
特に小説を読むとき、「筋」に対しての関心がどんどん薄れていっているのを感じていて、これは年齢のせいでもあるのかな、とも思うけれど、面白い小説はただ読んでいて面白いんだよな、というようなことを考えていたら、保坂和志自身もそういうことを言っていたっぽい。
「ストーリー」じゃなくて、小島信夫さん曰く、「そのつどそのつどおもしろい」というか、ずーっと何だかおもしろいっていう書き方が、いちばん、いいんじゃないかと。
— k_hosaka_bot (@k_hosaka_bot) 2020年12月29日
実際、保坂和志の小説は読んだ端から読んだことを忘れるような読み方をしていて、読み終わった後には、文体と、いくつかの印象的なフレーズが残像のように頭に残るような感覚になる。それが心地よくて定期的に読みたくなる。(もちろん書かれているテーマに共感するというのもあるけど。)
3.多和田葉子『百年の散歩』など
多和田葉子は今年初めて読んで好きになった作家だ。新刊は読んでいないけれど『百年の散歩』『雪の練習生』『犬婿入り』と3冊続けて読んだ。多和田葉子の小説は、まさに、「そのつどそのつどおもしろい」小説だと思う。『百年の散歩』はベルリンの街を巡る短編集だが、例えば終盤にあるこの文章の心地よさ。思わず読んでしまう力があると思う。
町は官能の遊園地、革命の練習舞台、孤独を食べるレストラン、言葉の作業場。未来みたいな町の光景に囲まれていれば、未来はすぐに手に入るものだと思いこんでしまう。人を激しく待つ時は特にそうなのだ。待ち合わせをしてうまく会えたとしても、それからもちょろちょろと流れ続けていく時間を忍耐強く生きなければならないことなど念頭にない。今すぐ、ごっそりと全部欲しいのだ。傷つくことなど全く恐れていない。身体ごと飛びついていく。はねつけられたら、さっと離れていけばいい。傷つく必要なんてない。何度ふられても街には次の幸せがそこら中にころがっているのだから。
『百年の散歩』p234
4.伴名練『なめらかな世界と、その敵』・テッド・チャン『息吹』
そういえば両方とも発売日去年でしたね......。2作とも今年に入ってから読んだ。
自分にとってのSFの面白さは(非常に雑な言い方だけれど)設定や世界観がテーマに直結できるところだと思っていて、2作ともそういう意味でとても面白かった。『なめ敵』は登場人物がキャラクター(二次元)的で、だからこそのテーマが描かれているなと思う。『息吹』は現代の延長線上にあるテクノロジーに対する倫理を示すような作品集だった。強いて比較するなら、伴名練は情念の作家で、テッドチャンは理念の作家だと思う。
5.ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
海外文学をもっと色々読みたいなと思っているのだけれど中々読めないでいる。
『灯台へ』も、読もうとしてからチューニングが合ってちゃんと読めるようになるまで時間がかかった。スコットランドの孤島に住むラムジー一家を中心とする群像劇なのだけれど、作品として扱う時間の流れを描写によって表現しているような小説で、例えば第一部は非常に緻密な心情・風景描写によって登場人物達の過ごす濃密な時間を体験する一方で、第二部ではラムジー一家が家から離れると、次から次へと早回しのように時間が過ぎる。物語以上に、そういう映像を見ているような読書体験だった。
6.千葉雅也『動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 』
哲学に対する興味をずっと持っていて、それだけで全然読めていないような状況が続いていて、今年はちょっとミーハーかなと思いつつ千葉雅也の本を手に取った。『勉強の哲学』を読んで、その上でこの本にチャレンジしたのだけれど、やはり難解だった。「繋がること」についての主題は自分にとって興味のあるところで、なんとなく読んでイメージはできるし、実感に対して納得できるような気がするのだけれど、読めたとは到底思えない。
ただ、良かったのは、ここで挙げられているドゥルーズを初めとして、その周辺の哲学者(ベルクソンやヒューム等)が挙げられていたことで、読むとすればこの辺りを読んでみようかなと思えたことで、そういうとっかかりを掴むことはできたかもしれない。体系的に読めれば一番良いのだけれど、たぶん独学では厳しいよなと思ったりしている。
今年一番ちゃんと読んだやつ。こういうものも書いた。
たぶん、シャニマスに関してはイベントシナリオさえ追いかけていれば作品としてのコアな部分は追えると思う。特に今年に入ってからのシャニマスのイベントシナリオは散文的な手つきになってきていて、描写を繋げることでテーマを浮かび上がらせるようなことをしている気がする。「何」を書くか以上に「どう」書くかというところに重点が置かれていると言えば良いのか。デカルトだったりオザケンの連載だったりロラン・バルトだったりといったところから引っ張ってくるのもすごいが、そういう手つきの好ましさがシャニマスの大きな魅力になってきていると感じる。
以上。
振り返ると読むことについては悪くない一年だった。
引っ越して通勤時間が増えたので来年はもう少し読めると良いと思う。
2020年私的音楽まとめ
今年聴いた音楽のメモ。
noteに日記を書くことを始めたのでそっちでも良いかなと思ったのだけれど、備忘録的なものはやっぱりブログに書いておいた方がいい気がするのでこちらに。
1.上田麗奈『Empathy』『リテラチュア』
前回のシングルから2年ぶり、アルバムとしては4年ぶりというところで、まず音楽活動を続けてくれて嬉しいという思いがあった。世界観がある、と言うと陳腐に聞こえてしまうかもしれないけれど、上田麗奈さんが歌う声から広がってくるイメージは確固としたものがあって、物語を聴いているように思えてくる。声優さんがアーティストとして表現するということの意味を感じられるというか。今年出た2枚とも、『RefRain』ほどはコンセプトに振り切ってないのだけれど、そのぶん声や歌い方や歌詞そのものから表現されるものがストレートに伝わってくるような気がする。
2.サニーデイ・サービス『いいね!』
これまでサニーデイ・サービスのことはあまりピンときていなかったのだけれど、このアルバムのおかげで今年はサニーデイの年になってしまった。問答無用にいい。『春の風』を聴いたときの、これ以上の正解はないんじゃないかというくらいのワクワク感。今年何度「今夜でっかい車にぶつかって死んじゃおっかな」という歌詞を聴いたかわからないし、外を歩いているときに気付けばくじらみたいな雲を探している。酔った勢いで買ったレコード盤を年末年始に実家に帰ったら聴こうと思っていたのだけれど、今回見送りになったためしばらくおあずけ。
3.Maison book girl『Fiction』
このグループがベストアルバムにこの名前をつけることの正しさ。アルバム名の発表をライブ会場で見た時点でやっぱり追いかけてきて良かったなと思えたぐらい。ベストアルバムなので最後2曲を除いて既存曲なのだけれど、全曲リマスタリングされているほか、初期の方の楽曲はリレコーディングされていて、現在の力強くなった歌唱で収録されているのが嬉しい。あらためて、コンセプトを突き詰めようとすればポップなままにとことん突き詰められるのはアイドルグループの強みだと思う。このアルバムのリリースに合わせた全国ツアーは中止になってしまったのだが、代わりに開催された無観客ライブ「Solitude BOX Online」は配信という環境を制限ではなく映像表現の手段としてフル活用しており、まさにFictionを見ている気分になった。
4.eastern youth『2020』
今年はフェスの開催が中止になる中、フジロックフェスが開催期間中に過去のライブを配信してくれていた。そこで見たeastern youthの『夏の日の午後』がとにかく格好良く、今年アルバムが出ると言うことを知って迷わず買いに行った。白地に縦書きの、まるで詩集のような歌詞カードを見ながらギターの轟音と声を浴びると背筋が伸びる。
5.ゆうらん船『MY GENERATION』
今年初めにArtTheaterGuildのライブに行ってから、その周辺の(=Spotifyでサジェストされる)バンドを良く聴くようになったのだけれど、ゆうらん船はその中でも気に留まったバンドだ。トーンが好ましいというか、決してわかりやすい音楽性ではないと思うのだけれど、ずっと聴いていられる心地よさがある。
6.赤い公園『オレンジ/pray』
赤い公園は去年ぐらいからよく聴くようになったバンドだった。興味を持った切っ掛けは一昨年、アイドルネッサンスというアイドルグループが解散し、そのメンバーが新しくボーカルに入ったというニュースを知ったからで、そんなことがあるんだ、と思ったのだ。そして、今年10月、あの出来事があったあとに離れてしまっていたとき、Spotifyからサジェストで流れてきたのが「pray」で、通勤中に思わず立ち止まってしまった。そういう意味づけはノイズというか、音楽そのものに対して純粋じゃないのかも知れないけれど、MVを見て尚更、こんなことがあるのか、とただ言葉を無くすしかなかった。
7.SuiseiNoboAz『3020』
年末に飛び込んできたアルバム。これまでSuiseiNoboAzを聴いたことが無かったのだけれど、まず表題曲の「3020」の歌詞の力で圧倒された。
スピードを上げて
前に進むこと自体が
未来をたぐり寄せる引力を生むから
ロックンロールは逆回転の力だ
SuiseiNoboAz「3020」
ロックンロールの価値のひとつが、ある種の言葉を音楽に乗せて届けることにあるとするならば、このアルバムはそれを極限まで研ぎ澄ませたようなアルバムだと思う。購入特典で見ることの出来たリリース記念配信ライブを見終わったあとには放心してしまった。2020年という年の最後に、このアルバムに出会えて良かったなと思えた。
10選記事っぽくしたかったが、色々聞いていた気がするけど今年出たものに絞ると10枚は集まらなかった。まあ無理して選ぶものでも無いと思うしいいか......。
それでも、今年は音楽的には多くの出会いがあった年だったように思う。たぶん今フェスに行ったらこれまで以上に楽しめる気がする。
来年も良い音楽との出会いがありますように。
「___・ラジオ・デイズ」編集後記の編集後記
ガルラジ合同本「___・ラジオ・デイズ」は、本日よりBOOTHにて予約頒布を開始いたします。「ガルラジに関することならなんでもあり」のレギュレーションのもと集まった32名34作品、A5本文P278の自立する合同本になりました。(1/3) #ガ合 #エアコミケ #頒布情報
— ひっかけ/kk_h (@orb_of_college) 2020年5月2日
https://t.co/YFuc5g4GO7 pic.twitter.com/HP2zLF3Tzi
ガルラジチーム富士川No.1イベント参加レポート(そして、続くということについて)
2020/1/26 日曜日、都内某所で開催されたガルラジ「チーム富士川No.1イベント」に参加してきた。
イベントが始まる前にTwitterでよく見る人たち、ガルラジを一緒に聞いてきたリスナーたちが、当たり前のようにいることがとても嬉しかった。ああいう場所で立ち話をすることはあまり得意じゃないし、かなり緊張もしてしまうほうなので、あまりうまく立ち回れなかったなという心残りがあったりする。(もし何か失礼があったら申し訳ないです……)ともあれ、非常に居心地の良い空間だったのは間違いない。
藤田ゆきのさんの案内から始まったイベント本編は、果たして、素晴らしいものだった。
スタッフさんのチョイスも含めたラジオの振り返りや、藤田ゆきのさんアクスタが景品の高難易度ガルラジクイズ、そして公開録音と、間違いなく、本当にガルラジが好きな人のためのイベントだった(山北早紀さんが「いつもは見ない顔が多い」といった意味合いのことを言っていたのも印象的だ)。
そういうイベントだったから、と言うべきか、イベントに参加することで、ガルラジというコンテンツに対してより解像度が上がった場面があった。
ひとつは、振り返りのコーナーで実際の収録風景の映像が流れたこと、そして、その後の公開録音で、ステージ上に実際の収録の再現が行われたこと。
ガルラジは、演じている声優さん自身の身体性が大きく関わっているコンテンツであり、それは「役である時の演者さんの振る舞いが(台本に無くても)キャラクターに還元される」ということであるのだけれど、実際の収録風景がそこに再現されたことで、声だけでは無く、声優さんたちがブースでラジオをしているその姿が、チーム富士川の3人の姿として表現されたのだ。このイベントでそういうものが得られるとは正直思っていなかったので、嬉しい誤算だった。
そしてもう一つは、新田さんが最後の挨拶のときに参加者を指して「リスナーの中の人」と呼んでくれたこと。聞いた瞬間に「本質だ」と思った。これほどまでに参加者である僕たちを上手く指し示してくれる言葉も無いだろう。僕たちもTwitter上でガルラジについて語っているときは間違いなくガルラジのリスナーで居て良いのだ。こんなに嬉しいことは無いだろう。こういうイベントではやはり然るべくしてこういうことが起こるのだと思った。
そして、公録の最後には、コンテンツの新しい展開、富士川SA「2020大感謝祭」でのコラボレーション企画の発表。そして「2020年もガルラジ!」という合言葉。ガルラジが今年も続くことが示された。
本イベントの位置づけは、ガルラジ2ndシーズンの総まとめ、ボーナスステージ的なものであり、少なからず、「区切り」としての予感を持って臨んだ人は多かったと思う。僕もそうだった。
そして、これと似たようなこと(臨んだときの悲壮感は比較にならないけれど)を、僕は数年前に経験している。
kamikusa.hatenablog.comこの記事でも書いたが、ソーシャルゲームを代表として、リアルタイムに配信される形で展開するキャラクターコンテンツは、コンテンツとしての終わりが明示されない。だから、続くことを祈るしかないし、続いて欲しいと祈ることができてしまう。
そして、そういった祈りが届いたときは、やはり格別に嬉しいものなのだ、ということを再認識できたことは、今回参加することができて一番良かったことかも知れない。
ガルラジにおける「時間」ってもうどうあっても止まることは無いと思うんですけど、その上で、2020年もその時間を共有することができるってことを言ってもらえたのは本当に嬉しいですね……
— 紙草 (@kkamikusa) 2020年1月26日
リスナーとしての我々はラジオが終了したら元リスナーになるしかないわけなんだけど、そこまでも含めてなんかこれから先のことが愛おしくなっちゃったな
— 紙草 (@kkamikusa) 2020年1月26日
#2020年もガルラジ! やっていきましょう。
ガールズ ラジオ デイズ BUMP OF CHICKENイメージソング(ガールズ ラジオ デイズ インプレッション総括)
一昨日、2ndシーズンの結果発表があったばかり(富士川おめでとう!)で、総括としては良いタイミングなのかな、と。むしろこれまで記事書いてなかったことに驚いています。
今確認したらガルラジでイメージソング流行ったのだいたい2ヶ月前ぐらいみたいなんですけど、まあ別にイメソンはいつやったっていいし、アーティスト被りしてもいいという精神でやります。
各チームにテーマとするアルバムを割り当てて、その中から各キャラクターに曲を割り当てる、と言うやりかたで行こうと思います。それでは対戦よろしくお願いします。
- チーム岡崎 / アルバム:『aurora arc』
- チーム富士川 / アルバム:『RAY』
- チーム双葉 / アルバム:『COSMONAUT』
- チーム徳光 / アルバム:『jupiter』
- チーム御在所 / アルバム:『present from you』
- 終わりに
- イメソン記事
チーム岡崎 / アルバム:『aurora arc』
「同じ高校に通う三年生」、「放送部」、「仲良し三人組」というチーム岡崎は、特に2ndチームに入ってから、終わりについて一番向き合わざるを得ないチームでした。「ガルラジの終わり」=「高校生活の終わり」=「3人の日常の終わり」という時間の区切りが、どのチームよりも明確だったからです。「リアルタイムである」ということがガルラジの大きな特徴の一つですが、それを真っ正面から受け止めたのがこのチームでした。
だから、アルバムは今年リリースされた最新の『aurora arc』を。このアルバムは全体から、過ぎ去ってしまったものに対する眼差しに溢れていて、それが、チーム岡崎の彼女たちのこれからに寄り添ってくれるように思えるからです。
二兎春花 / 『新世界』
天気予報どんな時も 僕は晴れ 君が太陽
二兎春花は太陽のような存在でした。眩しくて、熱くて、引力がある。真維さんと萬歳の青春を連れてきたのは二兎春花でした。リスナーも二兎春花から光を貰い続けていました。彼女が最後に自分の進路に対して迷子になったのは、区切りがついてしまう現実に対しての未練や否定では無くて、本当に「わからなかったから」なんだと思います。さっきチームについて書いたことと早速反対のことを書きますが、二兎春花にとって、きっと全ては現在形です。
だから、彼女に対しては、アルバムの中で最も現在の希望を歌うこの曲を。
萬歳智加 /『話がしたいよ』
鼻で愛想笑い 綺麗事 夏の終わる匂い まだ覚えてるよ
萬歳智加の他人に対する距離の取り方というのはやっぱり親近感を感じるもので、「しょうがない」みたいな言い訳が無いと一緒にいることに安心できないような、実家が自営業であることもあって現実主義的なところも含めて、そういう不器用さにずっとやきもきもしていたわけですが。最後にはちゃんと向き合うことができて本当に良かった。
この曲は2ndシーズンのはじめの方の萬歳の印象で10年後の萬歳を思い浮かべたときに思いつきました。
桜泉真維 / 『アリア』
見つけたら鏡のように 見つけてくれたこと
桜泉真維の、というか真維さんから春花への歌ですね。人に自分を見せることに臆病だった真維さんが、ガルラジの、春花のおかげで自分を認めることができたこと、って書き出すと野暮なことこの上ないですが。ってか素直になった真維さんめちゃくちゃ可愛かったですね。
数年後に、3人の、春花との出会いを奇跡みたいに思い返すのはきっと真維さんなんだろうなと思います。
チーム富士川 / アルバム:『RAY』
1st、2ndともに文句なしに(方向性は大きく変わったものの)「面白いラジオ」をやって、みごと2ndシーズン第1位を勝ち取ったチーム富士川。物語的には、チーム富士川はやはり岡崎と対比される存在です。それは年魚市すずと二兎春花の関係性というところに留まらず、彼女たちのチームとしてのあり方が岡崎と対照的でした。
チーム岡崎が、仲良し3人組がラジオの在り方にぶつかっていくチームだとすれば、チーム富士川は、ラジオを通して、バラバラだった3人が繋がっていくチームでした。要所要所で金明さんがクリティカルなことを言うのが良かったですね。それとゆいすず。
『RAY』は近年のBUMPの傾向を決定づけたアルバムだったと思っていて、『ray』に代表される楽曲群は、無鉄砲では無い前向きさ、別れだったり、挫折だったり、そいったどうしようもないものを受け入れた上でも、信念を持って前へ進んでいく意思のようなものが、明確になった一枚だと思います。これまでを受け入れて、前へ進んでいく彼女たちにぴったりかなと。
年魚市すず / 『虹を待つ人』
そのドアに鍵は無い
年魚市すずは「鍵の無いドアを開けられた」人間です。他ならぬ二兎春花によって。だからこれは彼女に向ける曲では無くて、彼女から向けられる曲でもあります。
年魚市すず、マジで凄かった。喋りが上手いのは言うまでも無く、1stのときの友達事件とか、2ndのポエム大学受験事件とか、あんなに顔がいいのにマジかコイツってところで狂わされてました。春野さんの演技も絶妙でしたね。
彼女なりに上手くいかないところ、ズレてるところは明示されつつ、そんなこちらの心配をよそに思い切り走りきった彼女はとても主人公然としていました。かっこいいんだよな、やっぱり。
白糸結 / 『morning glow』
あなたを変えようとしたあなたは まだ誰にも出会っていない あなたにも出会っていない
ガルラジを始める前の白糸結をイメージしました。ガルラジを始めることに対しては一番屈折があったように思います。やってみたら上手くいかなかったことを知っていて、でもそれを上手く受け止められないまま引き摺ってしまっているような。年魚市が白糸を連れていったのは、諦めていそうで全然諦め切れていない、そういうところへのシンパシーもあったんじゃないかな、あったら良いなと思います。
それにしても、白糸結、あざとさの権化だと思ってるんですけど、生主までやってるのに本人に自覚なさそうなのお前本当にそういうとこだぞ……
金明凪紗 / 『ラストワン』
何度でもなんて無理なんだ 変われるのは一度だけ 鏡の中の人と 交わした希望の約束
夢を追うという意味で、金明さんは一番ギリギリの場所にいて、ガルラジがほぼラストチャンスだったことは間違いなくて、でも、勝算があったわけではないと思うんですよね。年長者としての振る舞いはしていたけれど、自信があるわけじゃないというのは1stでも示されていたし、前述したように、ときどき年魚市に匹敵するような感傷的な言葉を言ったり、内面にナイーブでロマンチストなところが垣間見えるのが好きでした。
あと、私事ですがアクリルスタンドプレゼント企画で金明さんのアクリルスタンドを戴きました。本当に嬉しかったです。ずっと大切にします。
「いつか、あのときは楽しかったと、言えるように」言えますよね? 金明さん。 pic.twitter.com/nJmBUiiVpz
— 紙草 (@kkamikusa) October 25, 2019
※番外 ゆいすずイメージソング
すず→ゆい / 『グッドラック』
君と寂しさは きっと一緒に現れた
ゆいすずは将来ルームシェアするので、ちょっと曲とニュアンスが違ってしまうんですが、BUMPで誰かに向けた歌を選ぶと大抵別れの歌になってしまうのでその点は目を瞑っています。
ガルラジが終わって会う頻度が減って白糸に会えなくなって寂しくなって連絡するのぜったい年魚市の方からであって欲しい。いやだって年魚市があれだけ好き放題出来たの絶対白糸が隣にいたからですよ。どこかで白糸がブレーキ踏んでくれるだろうって思ってる節があって「もうこれ完全にバディじゃん……」って思いながら聴いてました、特に2ndシーズン前半。どうもまだ白糸のことをなんか隣にいると面白い存在以上に思っていない節がありますが、はやく気付いてくれ、というか気付かせてもらってくれ……
ゆい→すず / 『サザンクロス』
その胸にしまった火に憧れた 飲み込まれて消されてしまいそうで 夕焼けみたいに温かくて 寂しくて強かった その火に
ゆいすずは将来ルームシェアするので以下略
ひょっとして白糸さんちょっと年魚市さんにまだどこか引け目を感じてるんじゃ無いですか? ただ憧れる段階はもうとっくに乗り越えてるよ、そのまま行って大丈夫だよ絶対届くって白糸を選んだ年魚市を信じて欲しい。「私たちが二兎(210円)を選ぶのは最初から決まってたこと」とか言ってる場合じゃないんだよ1stの時を考えれば年魚市はそういうの全然気付かないんだから白糸から行かないとダメなんだよ……きっと連絡は向こうから来るからそのときにちゃんと気付いてくれ頼む……
チーム双葉 / アルバム:『COSMONAUT』
気を取り直して、チーム双葉。「姉妹」ということ以上に、「家族」がラジオをやるということにとても真摯だったんだな、ということを、2ndシーズンを通して気付かされました。あと花菜がいることもあってかわいらしさに溢れていたラジオでもありました。要所要所で花菜のノリが良いの本当に良かった。
『COSMONAUT』は『RAY』の一つ前のアルバムで、ちょうど過渡期だったんじゃないかなと思っています。これまでの勢いが影を潜め、全体的にあんまり明るさがなくて、祈りのようなものが満ちているように感じられるアルバムです。個人的には一番思い入れのあるアルバムだったりします。
2ndシーズンであんなあらすじを提示されてしまったため、3人がバラバラになってしまうんじゃ無いか、時間と社会に流されて、ガルラジの終わりとともに失われてしまうものがあるんじゃないか(岡崎が「別れ」なのに対して、双葉から予感されたのは「喪失」でした)と思ったりしていたときに、このアルバムを充てたんですが、結果的に大丈夫になって本当に良かった。家族の愛情は偉大で、とても強かでした。
玉笹彩乃 / 『イノセント』
子供じみていて恥ずかしいよと 馬鹿にしたけど 恐らく自分より 素直で勇敢なだけ
僕は玉笹彩乃さんに本当に謝らなくてはいけなくて、特に2ndシーズンに入ってから、提示されていたあらすじのこともあって、「他の二人に比べて何も持っていない」という彩乃に、学生時代の鬱屈を見出して過剰に入れ込んでいました。振り返ってみても、本当に良くなかったです。ごめんなさい。
だからあまりに自省的、一歩間違えれば自虐的にも聞こえてしまうこの曲も、取り下げるべきなのかもしれないんですが、それでも彩乃にそういったものが全くなかったかというとそうではないと思うので、そのままにしました。これが彩乃だとはもはや思いませんが、彼女が聴いたときに感じるところはあるんじゃないかな、と。
玉笹彩美 / 『beautiful glider』
羽根の無い生き物が飛べたのは 羽根が無かったから
玉笹彩美は本当に格好良い。19歳ニートでアイドル志望、社会常識に冒されている我々からはとても危なっかしそうに思えてしまうんですが、彩美は彩美自身のことをとてもよくわかっているから、そんな我々の不安なんてどこ吹く風で自分の思ったとおりになんとかしてしまうんですよね。最後にYoutuberになったのあまりにも彩美で本当に爽快でした。受け売りになりますけど、主人公というかもうヒーローですよね。当たり前に家族のことを大切にしているところも。
それでも、彼女自身の中で色々考えているのかも知れないし、悩みもあったのかも知れない、それでも、彩美はそうあることを選んだんだろうな、ということを、この曲を聴きながら考えていました。
玉笹花菜 / 『ウェザーリポート』
あなたの その笑顔が 誰かの心を許すなら せめて傘の内側は あなたを許して どうか見せて欲しい
花菜のことで一番印象に残っているのは、1stシーズンの友達、なおちゃんとの別れだったりします。1-5の「試行回数が足りない」から始まる花菜の独白は聞くたびに今でも泣きそうになる。この曲を聞いたときに、花菜となおちゃんの学校からの帰り道の光景が思い浮かんで離れなくなってしまいました。
花菜は聡明だから、相手のことを考えて何も言わない、ということも出来ると思うんですよね。でも、言葉にして伝えることの大事さを、花菜はガルラジを通して実感しているはず。花菜の言葉のおかげで彩乃は前に進むことが出来たのだから。
チーム徳光 / アルバム:『jupiter』
さて、何から書きましょうか……。
まず、チーム徳光の位置づけがガルラジの中で特異だった点について。岡崎、富士川、双葉の3チームにとってのガルラジは「彼女たちが、ラジオを通して物語を作っていく」であったのに対して、当初のチーム徳光、つまり手取川海瑠にとってのガルラジは「物語そのもの」でした。だから1stシーズンで一番フックが強いのは徳光で、手取川海瑠の世界に、感情に一気に引き込まれてしまった。ガルラジが地方というものをコンセプトとして打ち出している以上、地元と東京というテーマを持つ物語があることは、必然的でもあり、そして僕も含め、それは多くのリスナーに刺さった。
小説を読むと、手取川がラジオそのものが純粋に好きだったわけではなく、母親と東京の存在をそこに見ていたことがわかります。手取川にとってラジオをするということの意味づけは、ラジオの外部にあった。だから、「ラジオで物語をする」のではなく、「ラジオをすることが物語」だった。それでもあれだけラジオ出来てしまうというのは、やっぱり天才なんだと思いますが。
しかし、ガルラジは、「物語であり物語でない」コンテンツです。結果から見れば、2ndシーズンを通して、手取川海瑠にとってのラジオから、そういった意味づけは薄れていったように思います。言うまでも無い、吉田文音という存在によって。1stシーズンでは「たったひとりの反抗」でしたが、「たったひとり」でも、「反抗」でも無くなってしまった。ある意味、ガルラジによって一番大きなものを失ったのは手取川海瑠かもしれません(ラジオでは「成長」という言葉が使われていましたが、これをそう呼ぶべきかどうかは意見が分かれるところだと思います)。
でも、その代わり、手取川は、ラジオが好きになったと思うんですよね。僕はその一点だけで、良かったな、と思えています。彼女にとっての幸い、なんてことを考えるのはおこがましいことなんですが、それでも。
と、まあつらつら書いて来ましたが、こんなのは全部終わってしまったから言えることで、聞いているときは振り回されっぱなしでめちゃくちゃ楽しかったです。ラジオを聞いて息切れするなんて体験初めてだったよ……。そもそも、「屈託を抱えた人間がはちゃめちゃな人間に会ってはちゃめちゃになっちゃう」のが大好きなので、2ndも本当に推してました。1位とれなかったのは素直に残念に思ってもいます。
さて、アルバムですが『jupiter』を選びました。言わずと知れた、メジャー一作目のアルバムです。強いストーリー性を持った楽曲群は、今聞いても全く色褪せません。ちょうど、手取川海瑠の年齢の頃に出会って、今までずっと聞いてきたんだな、という郷愁もあったりします。ガルラジという物語に、立ち向かった彼女たちに。
手取川海瑠 / 『ダイヤモンド』
何回転んだっていいさ 擦り剥いた傷をちゃんと見るんだ 真紅の血が輝いて 「君は生きてる」と 教えてる
何を書こう……。上で言い尽くしちゃったところもありますが、あらためて向き合うとうまく言葉が出てこないですね。
1stの時の手取川に引き込まれたことは間違いなくて、それが2ndで失われてしまったことに対しての寂しさはもちろんあるんですが、それを受け入れられてしまっている、というか「1stの頃の方が良かった」と言ってしまうことに対する感情レベルの忌避感みたいなものが自分にはあって、だからこそ2ndでああなったことに対して良かったな、と思っているところもあります。ひょっとすると彼女にあんまり真剣じゃ無かったのかも知れないなとか思うとしんどくもなるんですが。
長縄まりあさんが、彼女に本当に真摯に向き合ってくれていることが、キャストトークの端々から感じられて、感謝しか無いです。チーム徳光は吉田さんも含めてキャストに本当に恵まれたなと思います。
選曲については、説明しなくてもいいかなと思っています。彼女に送るつもりで選びました。
吉田文音 / 『メロディーフラッグ』
作り笑いで見送った 夢も希望もすり減らした 変わる景色に迷うとき 微かな音が目印になる
吉田文音のことは最後までわからなかったですね。彼女が「ギャル」であるということは振る舞いに長けていることに最も現れていたと思います。地元が良い、という発言に至るまでの彼女の中に、どんな葛藤があったのか、あるいは無かったのか、こちらとしては本当に想像するしか無い。
それでも、手取川のことは、本当に好きだった、ということは間違い無くて、それは彼女のエゴが発露した徳光2-4事件があったから、というのが大きいんですが、おかげで少なくともそれだけは信じることができたのは良かったと思います。2-4から2週間は地獄でしたが……。彼女にだってそこまで余裕があるわけじゃ無いんですよね。
選曲には、彼女はこうだったんじゃ無いか、こうあって欲しいという願望が入っています。ひょっとすると、手取川海瑠は、吉田文音にとってのメロディーフラッグだったんじゃないかって。
ちなみに、手取川が東京に行った後、吉田文音は手取川のところに行けるのかという(悪い)話があって、僕は行けないだろうという立場を取っています。手取川にバイクの免許取って迎えに行ってもらいたい。
チーム御在所 / アルバム:『present from you』
1stのときは思っていなかったんですが、徳光と対比されるのは御在所だったなと思います。設定レベルで一番フィクショナルな存在であったが故に、ガルラジという物語からは一番自由でした。それが、2ndシーズンでは100点満点のラジオをして、そして何より、「遠くまで声が届いて、手紙が届く」というラジオの本質を受け取ることが出来た。徳光が、ある意味(手取川にとっての物語であった)「ラジオ」から脱却するチームだったことに比べると、御在所は、物語では無い、純粋なラジオを見つけることが出来たチームだったんじゃないかなと思います。そしてそれは、フィクショナルな彼女たちがそうでなくなっていった、ということでもあります。
『present from you』は、当時(2008年)までのシングルB面を集めたアルバムで、アルバムを通したテーマ性が一番薄いものです。ガルラジという物語の外部に居続けることが出来た彼女たちのことを考えたときに、自然と選ぶことが出来ました。
神楽菜月 / 『バイバイサンキュー』
ひとりぼっちは怖くない
神楽菜月はもう既に「何者かである」人間で、そんな彼女が、3人でのラジオを通して少しだけその荷を下ろすことができたのは本当に良かったなあと思います。正直あんなに可愛くなるなんて思ってもみなかった。
選曲は、父親が離れていった過去、そして彼女がいつの日か旅立つ未来をイメージしました。
穂波明莉 / 『夢の飼い主』
首輪や紐じゃないんだよ 君に身を寄せるのは 全て僕の意思だ
穂波明莉さんめちゃくちゃ可愛かったですね。一番ダメなやられかたをしていた気がします。声がズルい。途中から明確にギアが上がったの凄く良かったです。
彼女もかぐりんと同じく、持っている側の人間ですが、家族との確執(ってほどたいしたものじゃ無いのかも知れないけど)を乗り越えて今の場所を手に入れた、成し遂げた人間であると思います。彼女にミルミル呼びされる手取川のことを考えると本当に……。だから彼女には夢の歌を選びました。ひょっとすると、自分の夢に対する向き合い方に悩んでいた時期もあったんじゃないかと思いつつ。
徳若実希 / 『プレゼント』
そりゃ僕だってねえ
徳若実希を嫌いな人は誰もいない。ガルラジで一番等身大、抜群の安定感、彼女だけは絶対に変わらないという信頼感。2ndシーズンどれだけ彼女に救われたことか……
選曲、いやちょっと買いかぶりすぎかなって思ったりもするんですが、徳若が当たり前のように持っている優しさ、とにかく何があってもまずは目の前のことを受け入れてみるという、言ってしまえばノベルゲームの主人公気質みたいなところはあると思っていて、こういう曲を充てられるのは彼女しかいないのかなと想います。それなりにオタクで、たくさん物語を読んでいることは間違いないと思いますし。
終わりに
めちゃくちゃ長くなりました。そりゃイメソンとインプレッション同時にやろうとしたらこうなるか……。もしここまで読んでいただけた方がいらっしゃったら、本当にありがとうございます。
2019年、ここまでガルラジに囚われるとは想像もしてなかったです。放送があるたびにTLを眺めてあっという間に日付が変わってしまうの、めちゃくちゃ楽しかったです。Twitterがあったことにここまで感謝することも無いんじゃないかと思います。
ガルラジを通して、パーソナリティの彼女たちも変わりましたが、僕も受け取った分だけ、多分変わったんだと思います。3rdシーズンがあるかどうかはわかりませんが、どちらにしろ、日々は続くので、やっていきましょう。#2019年はガルラジ!
イメソン記事
最後に、他の方のイメソン記事を紹介。
cemetrygates1919.hatenablog.com
『七尾さんたちのこと』(著:吉﨑堅牢)
まず、この記事を読むあなたが『アイドルマスターミリオンライブ!』をある程度知っているという前提で書き出してしまうことを許して頂きたいのだが、あなたが「七尾百合子が自分のアイドル活動について書いた自伝」というものを想像力の限りを尽くして想像して欲しい。あるいは、こんなものが読みたいという期待でも構わない。
…………想像していただけただろうか。それでは、以下の小説を読んでいただきたい。なんと無料で読めてしまう。おそらく、あなたが想像をしたもの、期待したものを軽々と飛び越えるものが読めることを保証する。(なお、本作は連載の形式をとっており、次作は秋に発表される予定)
とにかく、解像度が高い。彼女たちがアイドル活動をしている姿が、驚くほどはっきりと目の前に浮かんでくる。七尾百合子の語りで展開されるシーンは、レッスン、バラエティ、握手会、演劇、ライブ、どれも今の世のメジャーアイドルであれば必ず当事者となるであろう場面で、そういった意味ではひねりのない、本当に実直な「アイドル小説」だ。そして、本当におそるべきことに、それぞれのシーンが全て実際にあったことのように思えてくる。喚起されるイメージとしては背景や人物描写が非常に細やかなアニメーション作品が近いだろう(直近で言えば『リズと青い鳥』だろうか)。
おそらく、綿密な取材・調査に裏付けられているであろう細やかな場面の描写は、それぞれの場でアイドルが何を求められ、何を行い、何と向き合わなければいけないかを残酷なまでに抉り出している。
「公式」の設定から丁寧に丁寧に掘り下げられた、百合子、紗代子、志保を中心としたアイドルたちの存在感。特に、散りばめられた様々な文学作品からの引用は、小説としての強度とともに、語り手が他ならぬ七尾百合子であるということをどこまでも強く支えている。
そして何より、アイドル活動へ彼女たちが向き合う思いの瑞々しさ。それは彼女たちを成長という形の変化を与えるに十分な説得力を持たせ、そして彼女たちの成長が成し得る達成は、彼女たち自身はもちろんのこと、『ミリオンライブ!』を知る私たち皆が夢見ているものだろう。
二次創作として、そして青春アイドル小説として、間違いなく一級品であり、『アイドルマスターミリオンライブ!』を好きでいて良かったと心から思える作品だった。今から秋が待ち遠しい。
最近聴いてるアイドルグループの紹介とか
これまでアイドルといったら二次元なオタクをやってたわけなんですけど、ここ半年ぐらいで三次元アイドルも少し聴き始めていて、ライブにも何度か行ったりしたので紹介してみる。
Maison book girl
通称ブクガ。変拍子楽しい。
Maison book girl / bath room / MV
「今のアイドルグループの音楽ってひょっとしてかなり面白いんじゃないか?」って気づいたきっかけで、今一番気に入ってるグループ。メンバーのTwitter・ラジオも面白いし、一番追っかけっぽいことしてるかもしれない。年末のライブではタイムスリップ的な演出を入れてきたりして、現代アートっぽい面白さもある。
Maison book girl “Solitude HOTEL4F” 20171228@Zepp DiverCity TOKYO - Ep.1
sora tob sakana
通称オサカナ。ポストロック!
楽曲を提供している照井順政さんはハイスイノナサやsiraphというオルタナロックバンドで活動中の人で、最近ではアニメ『宝石の国』のOPテーマの作曲でも話題となった。聴いてみればわかる通り、ゴリゴリのサウンドを鳴らしている。一方でパフォーマンスだったり白を基調とした衣装だったりは正統派な瑞々しさが溢れていてその対比が凄く良い。ちょうど今月メジャーデビューし、アニメ『ハイスコアガール』のOP曲も担当することになり、勢いがあって今後も楽しみなグループ。
sora tob sakana/Lightpool(Full)
amiinA
読み方は「あみいな」。神話的スケール。
さっき紹介したオサカナ主催の、今年の2月に中野サンプラザで行われた「天体の音楽会」というフェスイベント(楽曲派寄りのアイドルと硬派なロックバンドが互いにステージに出てくるイベントで最高でした)でステージを見て惹かれて、今月のワンマンライブも観に行くことを決めてしまった。とにかく曲のスケールが音楽・歌詞ともにデカくて圧倒される。今アイマスもイベントをやってる「DMM VR THEATER」でのライブ映像を観たんだけど、VR的な演出が幻想的な楽曲と最高にマッチしている。
amiinA『Avalon』DMM VR THEATER Live
フィロソフィーのダンス
通称「フィロのス」。ちょっと懐かしさも感じるイイ感じのダンスミュージック。
本当にここ数日で聴き始めたぐらいなんだけど、凄く良い。「Funky But Chic」がキーワードらしく、イイ感じにノれるファンキーさと、上品さ・洒脱さを感じる音楽で聴いていて心地好い。ボーカルが歌唱メンバーごとに特徴があるのも良くて、日向ハルさんのハスキーで力強い声と、十束おとはさんの萌えっぽい甘い声が一つの楽曲から聞こえてくるのは結構癖になる。あと単純に歌唱力が凄く、以下のようなバラード曲も見事に歌い上げている。
以上、4グループ紹介してみました。聴き始めて驚いたのは、楽曲の多様さとそれぞれの質の高さ。「アイドル」という枠組みでどこまでやれるか、みたいなところも感じられて、結構自分の性に合ってるなあとも思ったり。今後も気に入ったら積極的に聴いたりライブ行ったりしてみたいですね(チェキとかは行く勇気無いけど……)。